| あつい、とミナキが苦しげに呻いた。酔った指先が、服を脱ごうとして襟元をいじくっている。見てられないなと思いつつ、マツバは残りの酒をあおった。すると、いつの間にか目の前に相手の顔が近付いている。ミナキは頬を上気させながら、うっすら泪を滲ませて、そうして、脱がせてくれ、とマツバに懇願した。マツバは口中の酒を飲み下し、いいけど、と猪口を置いてミナキに向き直り、ほんとにいいんだねと念押しした。 マツバは、相手の蝶ネクタイを外し、マントを脱がせて、かっちり着こなされている(ただし今は幾分乱れた)紫色のスーツに手をかけた。白いシャツに汗が滲んで、肌の色が透けて見える。首元のボタンを外すと、ふわり、甘やかな香りが立ち上り、マツバはどうも妙な気持ちになって、その香気の漂う首筋に顔をうずめた。ミナキがくすぐったそうに身を捩る。マツバの右手が躊躇いながら次々とボタンを外していった。
シャツの前側をはだけさせて、マツバはそのからだの線の細さに思わず息をのんだ。自分も細身だが、身長が高い分彼の方がより華奢に見える。すらりと長い手足、抱けば折れてしまいそうな腰つき、広くあるけれども女性を思わせるほどのなだらかな曲線を描く肩。襟に隠れていた首は思った以上に頼りなげだった。
鎖骨を指でなぞると彼のからだが僅かに反応した。彼はとろりとした目つきに一しずくの露をたたえてマツバを見遣る。マツバがその手をずらして後頭部を抱えるようにすると、首の背に触れた瞬間ミナキのからだが跳ねて、鋭く、あっ、と声を出した。気持ちいいの、尋ねるでもなくそう言って、猫をあやすようにうなじを撫でてやると、彼の声が次第に艶を増した。_ミナキは、快楽を与えられることにはまるで不慣れだった。
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顔を隠す腕をそっと退けると、相手の目は泪に溶かされてしまったように潤んでいた。視界を覆う腕を捕まれて、ミナキは決まりが悪そうに横を向く。まだ酔いが残っているのか、それとも流し続けた泪の所為か、その瞳は未だ焦点を定められていない。
暫くマツバはミナキを見おろして彼の息づかいを聴いていた。段々整ってくる呼吸に、何故か物足りなさを感じて、マツバは相手の耳に口付けた。唇を離すときにわざと音を立てると、それに反応して細い腕がびくついた。マツバがそれに驚いて、今まで掴んでいた手を離す。ミナキはそのままその腕をマツバの首に回した。ミナキに抱きつかれるような格好になったマツバはふとある考えに行き着いて、もしかしてきみ、と囁きかける。…みずの音が、苦手なのか。
ミナキは何も言わなかったが、瞬時に強張ったからだが、目尻から零れた泪が、答えのようなものだった。これは面白い。みずポケモンのスイクンを追う彼が、その音に恥じらうなんて…。
マツバは彼の耳元にキスをした。唾液をたっぷり絡ませて、執拗に、耳朶を舐り、耳の裏を舐めて彼の嫌うその音を幾度も直に響かせた。マツバがそうする度に、肩を掴む手には力が入ったり抜けたりして、ミナキはほとんど声にならない声をあげながら、マツバ、と相手の名を呼び続けた。
その間にもマツバの右手は相手のベルトを探っている。ミナキがそれに気付くとほぼ同時にマツバはズボンの中に手を入れ、そうしてミナキはその音と刺激に何度目かの声をあげた。淫らな音と抗しがたい感覚に、ミナキの理性は厭が応にも崩されてゆく。しかしながら、どんなに大きな快楽の波に打たれようと、どんなに心地よい痺れが迸ろうと、そう簡単に_例えば、マツバのように_容易く意識を手放せるつくりになっていないのがミナキの不幸だった。
初めて異性を知った少女のような反応を見せるミナキに、マツバは、ねえ、舐めてあげようか、と薄く笑った。ミナキは半ばしゃくり上げながら首を横に振るが、マツバはわざとそれを見ないふりをして事を進める。汚れるから、とミナキがマツバの髪を掴むが、マツバは心配ないよと笑って受け流し、それがどういうことなのか察したミナキは益々顔を赤らめるも、もはや制止の力を込めることはかなわなかった。間もなくして、ミナキは遂に耐えきれなくなる。マツバは喘ぎながらもそれを嚥下し、流石においしいものじゃないねと言うと、ミナキは真っ赤になって、酒など二度と飲むものかと俯いてしまった。
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