枕を並べて寝ていると、急に傍らの体温に触れたい衝動に襲われる。ミナキは小さな灯りをつけた。それは灯りと言っても、光量は周りの物体が仄かに輪郭を持ち始めるほどしかない。相手に目を覚まされても困ると思った彼は、薄暗さが頼もしいような、残念なようなと複雑な気持ちになりながら、隣に眠る親友の顔を覗き込んだ。

 

 金色の髪が、豆電球の光を柔らかく反射している。閉じられた瞳を縁取る睫は綺麗に揃っていて、頬に長く黒い影を落としていた。すっきり通った鼻梁に形のよい口元、顔の造形どれ一つを取っても、マツバは美を冠するに申し分のない青年だとミナキは思う。
 だが、そればかりがこの感情の出所ではないと彼は思った。それは殆ど直感のようなもので、単純な計算式を聞けば瞬時に答えが出るというような、ある種明白な事実としてそこにあった。

「どうしたんだい?」

 見つめていた唇が突然言葉を発したので、ミナキは驚いた。目を開けたマツバは、上半身を起こし、覆い被さるように、彼の後ろに手を突いた。

「…人の寝顔なんか、まじまじと見てさ」

 そう言って前髪を掻き揚げる。それでも落ちる髪はさらさらと音がしそうなくらいにしなやかだった。艶めいた瞳がミナキを捉える。ミナキは目を瞑り、枕に頭を擦り付けるようにしてその視線を振り切った。自身の鼓動がいつもより早まっていることに気付く。それは不意を突かれたせいばかりではなかった。

「あれ、また寝てしまうのかい?」
「…ああ、灯りを消してくれないか」
「ぼくの質問に答えてくれれば。
 …どうしてぼくを見つめていたの?」
「……」

(見つめてなどいない、と言ったところで、この修験者には何の意味もないのだろう。だからといって、その顔立ちに惹かれたからだと、正直に言えるものだろうか。そもそもそれが本当に私の正直な気持ちであるとしたなら、私はそれをどう整理すればよいのだろう。この気持ちを男性に魅せられた結果として捉えるべきか。それに、そう言ったことで彼の気持ちを害しはしまいか)

 …ミナキには沈黙することしかできない。

 

 

 

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