世界遺産ってなに?      
 

 なぜ『世界遺産』ができたの?

 なぜ 今 紀伊半島の一部が世界遺産暫定リストに選ばれたの? 

 登録された後はどうなるの?

 世界遺産について条約などあれこれ
              


 なぜ『世界遺産』ができたの?

〜過去から現在〜 
1960(昭和35年)頃、エジプトのナイル川にアスワン・ハイダムが建設されることになりました。
これによりラムセス2世が建てたことで有名なアブシンベル神殿などのヌビア遺跡群が、
水没の危機にさらされました。
この時、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)は、
ヌビア遺跡群救済キャンペーンを展開し、
世界中から寄せられた募金によってこれらの遺跡を築し、保護しました。
これを契機に、人類の歴史が造り上げた文化財や地球の自然を人類にとって
かけがえのない宝として国境を越えて保護しようと言う考え方が広がり、
1972年(昭和47年)パリで開催された第17回ユネスコ総会で
「世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)」が生まれました。

また、登録された物件は登録後も有効な保存管理がされることも必要条件となっています。

それから、30年が過ぎ、2003年7月現在、世界で754物件
(自然遺産:149、文化遺産:582、複合遺産:23)
日本では11件が登録されています。

そして、1つの国からは原則として同じ種類の物件を重複して登録出来ないことになっています。

しかしながら、これまでに世界遺産リストへの登録を申請されましたが、
現在未だに登録されていないものが214物件あります。
登録されなかった理由として、下記が考えられます。
 1.登録するか否かの審議が、世界遺産委員会で延長されたままになっている
 2.申請したその当時国によって申請が辞退された
 3.情報不足等、その他の理由によって登録する準備が整っていなかった
 4.重要性や完全性が欠如する為に登録されなかった


写真はhttp://www.misr-travel.net/main.html より




 なぜ 今 紀伊半島の一部が
   世界遺産暫定リストに選ばれたの?
  


        きいさんち    れいじょう さんけいみち
その 「紀伊山地の霊場と参詣道」 ってなんですか?
  

 日本列島の本州のほぼ真ん中の辺りに位置する紀伊半島は、その大部分が標高千m級の山脈が縦横に走り,年間3千oを越える豊富な降水が深い谷を刻む山岳地帯で、「紀伊山地」と呼ばれています。
 日本の原始信仰は、山、岩、森、樹木、川、滝などを神格化する自然崇拝が一般的で、容易に人を寄せ付けない神秘的な自然環境を備えた紀伊山地は、4世紀頃から神々が宿る特別な地域と考えられるようになっていました。
また、538年に百済から仏教が伝来して以来、仏・菩薩の浄土にも擬されるようになり、山岳修行の舞台ともなっています。
 
その結果、紀伊山地には、北部に僧空海(774−835)が唐から導入した真言密教の霊場「高野山」と、日本固有の山岳宗教である修験道の霊場「吉野・大峯」、そして南東部には自然崇拝に起源する神道の霊場「熊野三山」というように、世界的にも珍しい三種類の霊場が形成されることとなったのです。
 
特に、日本の社会構造が律令制から封建制へと変化する11〜12世紀は、1052年が末法思想の初年ということもあって、社会不安が著しく増大した時期となり、数多くの人々が心の安らぎを求めて紀伊山地の霊場を訪れるようになり、以後は社会的風習ともなって、日本の精神文化に大きな影響を及ぼし、特色ある文化的景観を形成するに至ったと考えられます。

そして、これらの貴重な文化財や史跡が参詣道(巡礼路)とともに広範囲にわたって極めて良好に遺存している比類のない事例であるということ、また、それらが今なお連綿と民衆の中に息づいている点においても極めて貴重な点であることから、世界遺産登録に推薦されました。


遺産の種別としては、文化遺産 <記念工作物、遺跡、文化的景観>です。
   



所在地としては、3県で合計29市町村にまたがります(平成17年の市町村合併の前)。
  和歌山県:新宮市、伊都郡かつらぎ町、九度山町、高野町
         西牟婁郡 白浜町、中辺路町、日置川町、すさみ町
         東牟婁郡 那智勝浦町、熊野川町、本宮町
  奈 良 県:吉野郡吉野町、黒滝村、天川村、野迫川村、大塔村、
         十津川村、下北山村、上北山村、川上村
  三 重 県:尾鷲市、熊野市,度会郡  大内山村
         北牟婁郡 紀伊長島町、海山町、
        南牟婁郡 御浜町、紀宝町、紀和町、鵜殿村

推薦資産の範囲としては、文化財保護法に基づき、国宝4棟、重要文化財23棟の建造物が含まれた、史跡7件、史跡・名勝1件、名勝1件、名勝・天然記念物1件、天然記念物4件が指定されています

「紀伊山地の霊場と参詣道」の主な構成 《文化遺産登録基準 》 (予定) 

「霊 場」

(境内地を含む)

慈尊院、丹生都比売神社、丹生官省符神社、金剛峯寺、金剛三昧院、

徳川家霊台、熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社、

那智山青岸渡寺、金峯山寺、吉野水分神社、大峰山寺など

「参詣道」

高野山町石道、熊野古道(大辺路・中辺路・小辺路・伊勢路)、大峯道

「その他」

那智大滝、那智原始林、 吉野山
熊野川(川が世界遺産になるのは、日本国内ではこれが始めてです)

 

「紀伊山地の霊場と参詣道」の資産地図


    和歌山県世界遺産登録推進協議会 ホームページより引用
         (http://www.sekaiisan-wakayama.jp)




それで、 現在世界遺産に ローロッパで唯一登録されている道=
サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路 
とは どんな所ですか?? 

図3-1 世界遺産「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」(スペイン・フランス)
◆フランスからスペインまでの1500kmの巡礼路

◆9世紀初頭813か838年(文献により異なる)、
北部ガリシア地方で星に導かれた羊飼いが
キリストの十二使徒の一人聖ヤコブの墓を発見しました。

◆そしてこの場所は『星の野原の聖ヤコブ』や
『カミーノ(道)・デ・サンティアゴ』と呼ばれ、
欧州や世界各地からの多くの巡礼者たちを迎え入れました。

◆ローマ、エルサレムと並び、このサンティアゴが
ヨーロッパ三大巡礼地の一つとして崇められ、
キリスト教信者の心の 拠り所となっています。

◆『サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂』の
建築は1071年〜1128年頃完成したといわれていています。
    
日本では平安時代。907年に宇多法皇が初めて熊野詣をされ、
1201年には後鳥羽上皇にお供した藤原定家が
熊野へ来られ『明月記/御幸記』を記されています。
また、804年最澄、空海遣唐使と共に唐に渡り、807年帰国。 
819年高野山に金剛峯寺建立されています。       
今回暫定リストに追加登録された平泉中尊寺金色堂も1124年に建立されています。

◆現在は巡礼色は薄くなっていて、若者が多く、スポーツ・体力挑戦のエリアとなっているそうです。

◆巡礼路の道標は統一されていて、スペイン国営の巡礼者専用の宿泊設備があり、巡礼者に対しては優遇されているそうです。

◆ガリシア州内にある約200kmの巡礼道は、和歌山県内の熊野古道と友好姉妹道(1998/10)になっています。
   

1985年 サンティアゴ・デ・コンポステ-ラ (旧市街)   スペイン側   文化遺産1,2,6
1995年 サンティアゴ・デ・コンポステ-ラへの巡礼路  スペイン側  文化遺産2,4,6
1998年 サンティアゴ・デ・コンポステ-ラへの巡礼路  フランス側  
文化遺産2,4,6



世界遺産「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」(スペイン・フランス)地図は、
(財)和歌山社会経済研究所ホームページよりhttp://www.wsk.or.jp/work/index-b.html

簡単な比較例

熊野古道

サンチャゴ・デ・コンポステーラ

全  長

約350km (京都・城南宮〜熊野三山)
和歌山県内:250km

約1,500km (パリ〜サンチャゴ)
スペイン内:900km ガリシア州内:200km

巡礼の時期

10〜19世紀 
最盛期1716年6日間で4776人

10〜15世紀 最盛期12世紀 
年間約50万人

遺産の内容

熊野信仰の中心である『熊野三山』、
真言密教の根本道場である『高野山』、
修験道の拠点である『吉野・大峯』の
3霊場及び、それらを結ぶ『参詣道』

『フランスの道』と言われる巡礼路本ルートと巡礼路が通過する市町村に点在する
1800件を超す歴史的建造物

関係市町村

3県29市町村(市町村合併前)

5自治州166市町

その他

シンボル:八咫烏 
道標:自治体により異なる
自然崇拝(アミニズム)を土台に、神道や仏教・修験道・真言密教など(多神教世界)

シンボル:ホタテ貝 
道標:黄色矢印/路上のホタテ貝
キリスト教(一神教世界)







登録された後はどうなるの?


世界遺産登録されても、ユネスコや世界遺産基金から、補助金など出ないですよ!
危機遺産登録物件に対しては、技術者等を派遣する為の費用として補助金が使われるそうですが、日本のように安定していて、自国で保全修復が出来る国に対しては、補助金等はありません。


世界遺産登録推進運動をきっかけにして

 “あるものさがし=わが町の宝物”を考えるきっかけにならないでしょうか?
  
不易流行なもの(ほんまもん)を客観的に伝える一つの方法となるのでは?
 ナショナルトラスト/エコツーリズム/エコミュージアム等、
 世界遺産登録以外にも、世の中には他にも色々手法がありますね。
 その地域によっては、組み合わせる事もできると思いますが。

◆世界遺産登録は『異文化を交流する為の教材の一つ』ですから、
世界遺産に登録された物件を色んな角度から観照しましょう!! 
  
例えば、「どうして、この世界遺産地域の子ども達はサッカーをしないのだろう?」と考えたとする。
もしかしたら、その地域には、地雷が埋められていて、
サッカーをしたくても出来ないのかもしれませんね。
   
文化財があって文化がない??
その文化財をあまりにも大切に思うが故に、『盗まれたら大変や!!』と防犯対策の為、
倉庫の中に仕舞い込んでしまうとしたら?その物件の保存状態や環境にもよりますが、
できるだけ現状維持されたほうがよろしいのではないかと存じます。
そして、盗まない人をつくる・盗まれないようにする為に・盗まれたらどうするか?
をみんなで一緒に考えていく事が、その地域の文化力ではないでしょうか。
       

過去7年間でよく尋ねられた メリットとデメリット についてまとめてみました。

 考えられるメリット       考えられるでメリット
   観光客増大                 観光公害
   観光ビジネス到来             本業せずサイドビジネスへ
   各条例・施設整備             整備することによる
   地球規模でのCM効果大           ・申請時内容からの変更
   他団体との交流増大              ・現状変化、そして悪化へ
   地元人の故郷発見             地球規模の批判対象
                           子どもの心が荒ぶ 
                                    (大人の金儲け主義による変化から)



さて、皆さんは、どう思われますか?
『世界遺産登録された後、どうなるのか?』は、
もしかしたら 誰にもわからないのかも知れません。
私が思うますに、世界遺産登録とは、
『世界遺産というジャンルの中で、デビューするだけ』なのです。
デビューした後、どうなるか、どうするか、そしてどうしたいかは、
世界遺産登録エリアに住む地元の方々一人ひとり心の持ち方一つにとても大切なものがあると思います。
ひとり一人の「心の持ちよう」で、良くも悪しきも変わっていくのではないでしょうか。
しっかりとした理念を持ち、地に足の着いた活動を あきらめず続けていく心意気。
そして、登録された後、その登録エリアに住む住まないに関わらず、
世界遺産を先に知ってしまった者の一人ひとりが、「どうしたいか?」と考え、
声をあげ、実行に移していく事が 一番必要で大切な事だと思います。
たとえ それが小さな一歩であったとしても。          (管理人 小野田真弓)
  




ユネスコとは、国連教育科学文化機関であります

(United Nations Educational,Scientific,and Cultural Organization=UNESCO)

教育と科学と文化の分野での国際協力をすすめ、相互のコミュニケ-ションをはかって世界平和と人類共通の福祉を実現させようと設立された国連の専門機関。

「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、
人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」
                
―ユネスコ憲章の前文−


 
世界遺産条約が誕生するまで            

文化財および自然環境の保護に関しては、第一次世界大戦前から国際条約の整備が進められてきました特に、1945年にユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が創設されてからは、1954年に文化財保護に関する「ハーグ条約(武力紛争の際の文化財の保護のための条約)」、1970年に「文化財の不法な輸入、輸出および所有権譲渡の禁止および防止の手段に関する条約」が採択されるに至りました。また、自然環境の保護についても、1948年にユネスコやフランス政府、スイス自然保護連盟などの呼びかけで、各国政府や民間の自然保護団体が参加してIUCN(国際自然保護連合)が発足。ユネスコはその設立当初から活発な活動を見せています。
さらに1970年、ユネスコは、自然と自然資源の合理的利用、保護に関する科学的研究を行うことを目的とした「人間と生物圏(MAB)計画」を決定。現在、世界遺産保護のための基本的な考え方の一つともなっている生物圏保護区(バイオスフィア・リザーブ)が生まれました。文化遺産と自然遺産の保全を一本化するという考えは、1972年にストックホルムで開催された「国連人間環境会議」で実を結びました。当時ユネスコの専門家たちは、文化財の国際的保護に関する条約の草案を提案し、IUCNの専門家たちも自然環境の保護条約の原案づくりをしていました。ユネスコと国連人間環境会議委員会はこの2つの条約草案を改善する任にあたり、両者はひとつの条約にまとめられました。これが、従来相反すると考えられてきた文化と自然には密接な関係があり、ともに保護していくことが大切であるという、今までになかった考え方を提唱する「世界遺産条約(世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約)」です。
最終的に、すべての関係諸国の同意が得られ、1972年11月16日に開催された第17回ユネスコ総会において世界遺産条約は採択されました。



〜世界遺産活動とは〜

     国境と世代を越えた共通の宝物

世界中のあらゆる地域には、国や民族が誇る文化財や自然環境があります。
世界遺産とは、現代を生きる世界のすべての人々が共有し、
未来の世代に引き継いでいくべき人類共通の宝物のことです。
そこには、国境という概念はありません。自国の文化と歴史を愛することは、
他国の文化と歴史を理解し、尊重することへとつながっているからです



           世界遺産は「文化遺産」「自然遺産」「複合遺産」に分類されます

    ・文化遺産:すぐれた普遍的価値をもつ建築物や遺跡など

世界遺産・・自然遺産:すぐれた価値をもつ地形や生物、景観等を有する
もの

        ・複合遺産:文化と自然両方の要素を兼ね備えているもの

〔文化遺産の登録基準〕

@人類の創造的天才の傑作を表現するもの。

Aある期間を通じて,または,ある文化圏において,建築,技術,記念碑的芸術,町並み計画,景観デザインの発展に関  し,人類の価値の重要な交流を示すもの。

B現存する,または,消滅した文化的伝統,または,文明の,唯一の,または,少なくとも稀な証拠となるもの

C人類の歴史上重要な時代を例証する,ある形式の建造物,建築物群,技術の集積,または,景観の顕著な例。

D特に,回復困難な変化の影響下で損傷されやすい状態にある場合における,ある文化(または,複数の文化) を代表 する伝統的集落,または,土地利用の顕著な例。

E顕著な普遍的な意義を有する出来事,現存する伝統,思想,信仰,または,芸術的,文学的作品と,直接に,または,  明白に関連するもの。(この基準Eだけで世界遺産リストへの登録が認められるのは,極めて例外的 な場合であり,原  則は,他の文化遺産,または,自然遺産の基準と関連している場合に適応されている)

〔自然遺産の登録基準〕

@地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには,生物の記録,地形の発達における重要な 地学的進行過程,或は,重要な地形的,または,自然地理的特性などが含まれる。

A陸上,淡水,沿岸,及び,海洋生態系と動植物群集の進化と発達において,進行しつつある重要な生態学的, 生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。

Bもっともすばらしい自然的現象,または,ひときわすぐれた自然美をもつ地域,及び,美的な重要性を含むも の。

C生物的多様性の本来的保全にとって,最も重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。
 これには,科学上,または,保全上の観点から,すぐれて普遍的価値をもつ絶滅の恐れのある種が存在するも のを含む。

2002年6月末現在、世界遺産リストに登録されたユネスコ世界遺産は、
自然遺産が144物件、文化遺産が563物件、複合遺産が23物件、
合計で、730物件(125か国)になりました。


国際連合教育科学文化機関憲章(ユネスコ憲章)
前文
この憲章の当事国政府は、その国民に代わって次のとおり宣言する。
戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。 相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて世界の諸人民の間に疑惑と不信をおこした共通の原因であり、この疑惑と不信のために、諸人民の不一致があまりにもしばしば戦争となった。 ここに終りを告げた恐るべき大戦争は、人間の尊厳・平等・相互の尊重という民主主義の原理を否認し、これらの原理の代わりに、無知と偏見を通じて人間と人種の不平等という教義をひろめることによって可能にされた戦争であった。 文化の広い普及と正義・自由・平和のための人類の教育とは、人間の尊厳に欠くことのできないものであり、且つすべての国民が相互の援助及び相互の関心の精神をもって果さなければならない神聖な義務である。 政府の政治的及び経済的取り決めのみに基づく平和は、世界の諸人民の、一致した、しかも永続する誠実な支持を確保できる平和ではない。よって平和は、失われないためには、人類の知的及び精神的連帯の上に築かなければならない。 これらの理由によって、この憲章の当事国は、すべての人に教育の充分で平等な機会が与えられ、客観的真理が拘束を受けずに探究され、且つ、思想と知識が自由に交換されるべきことを信じて、その国民の間における伝達の方法を発展させ及び増加させること並びに相互に理解し及び相互の生活を一層真実に一層完全に知るためにこの伝達の方法を用いることに一致し及び決意している。 その結果、当事国は、世界の諸人民の教育、科学及び文化上の関係を通じて、国際連合の設立の目的であり、且つその憲章が宣言している国際平和と人類の共通の福祉という目的を促進するために、ここに国際連合教育科学文化機関を創設する。



     世界遺産条約
           
            世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約
                   平成四・九・二八 条約七


 国際連合教育科学文化機関の総会は、千九百七十二年十月十七日から十一月二十一日までパリにおいてその第十七回会期として会合し、文化遺産及び自然遺産が、衰亡という在来の原因によるのみでなく、一層深刻な損傷又は破壊という現象を伴って事態を悪化させている社会的及び経済的状況の変化によっても、ますます破壊の脅威にさらされていることに留意し、文化遺産及び自然遺産のいずれの物件が損壊し又は滅失することも、世界のすべての国民の遺産の憂うべき貧困化を意味することを考慮し、これらの遺産の国内的保護に多額の資金を必要とするため並びに保護の対象となる物件の存在する国の有する経済的、学術的及び技術的な能力が十分でないため、国内的保護が不完全なものになりがちであることを考慮し、国際連合教育科学文化機関憲章が、同機関が世界の遺産の保存及び保護を確保し、かつ、関係諸国民に対して必要な国際条約を勧告することにより、知識を維持し、増進し及び普及することを規定していることを想起し、文化財及び自然の財に関する現存の国際条約、国際的な勧告及び国際的な決議が、この無類の及びかけがえのない物件(いずれの国民に属するものであるかを問わない。)を保護することが世界のすべての国民のために重要であることを明らかにしていることを考慮し、文化遺産及び自然遺産の中には、特別の重要性を有しており、したがって、人類全体のための世界の遺産の一部として保存する必要があるものがあることを考慮し、このような文化遺産及び自然遺産を脅かす新たな危険の大きさ及び重大さにかんがみ、当該国がとる措置の代わりにはならないまでも有効な補足的手段となる集団的な援助を供与することによって、顕著な普遍的価値を有する文化遺産及び自然遺産の保護に参加することが、国際社会全体の任務であることを考慮し、このため、顕著な普遍的価値を有する文化遺産及び自然遺産を集団で保護するための効果的な体制であって、常設的に、かつ、現代の科学的方法により組織されたものを確立する新たな措置を、条約の形式で採択することが重要であることを考慮し、総会の第十六回期においてこの問題が国際条約の対象となるべきことを決定して、この条約を千九百七十二年十一月十六日に採択する。
 

T 文化遺産及び自然遺産の定義

 第一条
 この条約の適用上、「文化遺産」とは、次のものをいう。
 記念工作物 建築物、記念的意義を有する彫刻及び絵画、考古学的な性質の物件及び構造物、金石文、洞穴住居並び にこれらの物件の組合せであって、歴史上、芸術上又は学術上顕著な普遍的価値を有するもの
 建造物群 独立し又は連続した建造物の群であって、その建築様式、均質性又は景観内の位置のために、歴史上、芸 
 術上又は学術上顕著な普遍的価値を有するもの
 遺跡 人工の所産(自然と結合したものを含む。)及び考古学的遺跡を含む区域であって、歴史上、芸術上、民族学上又 は人類学上顕著な普遍的価値を有するもの

 第二条
 この条約の適用上、「自然遺産」とは、次のものをいう。
 無生物又は生物の生成物又は生成物群から成る特徴のある自然の地域であって、観賞上又は学術上顕著な普遍的価 値を有するもの
 地質学的又は地形学的形成物及び脅威にさらされている動物又は植物の種の生息地又は自生地として区域が明確に 定められている地域であって、学術上又は保存上顕著な普遍的価値を有するもの
 自然の風景地及び区域が明確に定められている自然の地域であって、学術上、保存上又は景観上顕著な普遍的価値 を有するもの
 
 第三条
 前二条に規定する種々の物件で自国の領域内に存在するものを認定し及びその区域を定めることは、締約国の役割で ある。
 U 文化遺産及び自然遺産の国内的及び国際的保護
 
 第四条
 締約国は、第一条及び第二条に規定する文化遺産及び自然遺産で自国の領域内に存在するものを認定し、保護し、保 存し、整備し及び将来の世代へ伝えることを確保することが第一義的には自国に課された義務であることを認識する。
 このため、締約国は、自国の有するすべての能力を用いて並びに適当な場合には取得し得る国際的な援助及び協力、 特に、財政上、芸術上、学術上及び技術上の援助及び協力を得て、最善を尽くすものとする。
 
 第五条
 締約国は、自国の領域内に存在する文化遺産及び自然遺産の保護、保存及び整備のための効果的かつ積極的な措置 がとられることを確保するため、可能な範囲内で、かつ、自国にとって適当な場合には、次のことを行うよう努める。
 a 文化遺産及び自然遺産に対し社会生活における役割を与え並びにこれらの遺産の保護を総合的な計画の中に組み 入れるための一般的な政策をとること。
 b 文化遺産及び自然遺産の保護、保存及び整備のための機関が存在しない場合には、適当な職員を有し、かつ、任務 の遂行に必要な手段を有する一又は二以上の機関を自国の領域内に設置すること。
 c 学術的及び技術的な研究及び調査を発展させること並びに自国の文化遺産又は自然遺産を脅かす危険に対処する ことを可能にする実施方法を開発すること。
 d 文化遺産及び自然遺産の認定、保護、保存、整備及び活用のために必要な立法上、学術上、技術上、行政上及び財 政上の適当な措置をとること。
 e 文化遺産及び自然遺産の保護、保存及び整備の分野における全国的又は地域的な研修センターの設置又は発展を 促進し、並びにこれらの分野における学術的調査を奨励すること。

 第六条
1 締約国は、第一条及び第二条に規定する文化遺産及び自然遺産が世界の遺産であること並びにこれらの遺産の保護 について協力することが国際社会全体の義務であることを認識する。この場合において、これらの遺産が領域内に存在 する国の主権は、これを十分に尊重するものとし、また、国内法令に定める財産権は、これを害するものではない。
2 締約国は、この条約に従い、第十一条の2及び4に規定する文化遺産及び自然遺産の認定、保護、保存及び整備につ き、当該遺産が領域内に存在する国の要請に応じて援助を与えることを約束する。
3 締約国は、第一条及び第二条に規定する文化遺産及び自然遺産で他の締約国の領域内に存在するものを直接又は 間接に損傷することを意図した措置をとらないことを約束する。
 
 第七条
 この条約において、世界の文化遺産及び自然遺産の国際的保護とは、締約国がその文化遺産及び自然遺産を保存し  及び認定するために努力することを支援するための国際的な協力及び援助の体制を確立することであると了解される。
 V 世界の文化遺産及び自然遺産の保護のための政府間委員会
 
 第八条
1 この条約により国際連合教育科学文化機関に、顕著な普遍的価値を有する文化遺産及び自然遺産の保護のための政府間委員会(以下「世界遺産委員会」という。)を設置する。同委員会は、同機関の総会の通常会期の間に開催される締約国会議において締約国により選出される十五の締約国によって構成される。同委員会の構成国の数は、この条約が少なくとも四十の国について効力を生じた後における最初の総会の通常会期からは二十一とする。
2 世界遺産委員会の構成国の選出に当たっては、世界の異なる地域及び文化が衡平に代表されることを確保する。
3 世界遺産委員会の会議には、文化財の保存及び修復の研究のための国際センター(ローマ・センター)の代表一人、記念物及び遺跡に関する国際会議(ICOMOS)の代表一人及び自然及び天然資源の保全に関する国際同盟(IUCN)の代表一人が、顧問の資格で出席することができるものとし、国際連合教育科学文化機関の総会の通常会期の間に開催される締約国会議における締約国の要請により、同様の目的を有する他の政府間機関又は非政府機関の代表も、顧問の資格で出席することができる。
 
 第九条
1 世界遺産委員会の構成国の任期は、当該構成国が選出された時に開催されている国際連合教育科学文化機関の総 会の通常会期の終わりから当該通常会期の後に開催される三回目の通常会期の終わりまでとする。
2 もっとも、最初の選挙において選出された世界遺産委員会の構成国の三分の一の任期は当該選挙が行われた総会の 通常会期の後に開催される最初の通常会期の終わりに、また、同時に選出された構成国の他の三分の一の任期は当  該選挙が行われた総会の通常会期の後に開催される二回目の通常会期の終わりに、終了する。これらの構成国は、最 初の選挙の後に国際連合教育科学文化機関の総会議長によりくじ引で選ばれる。
3 世界遺産委員会の構成国は、自国の代表として文化遺産又は自然遺産の分野において資格のある者を選定する。

  第一○条
1 世界遺産委員会は、その手続規則を採択する。
2 世界遺産委員会は、特定の問題について協議するため、公私の機関又は個人に対し会議に参加するよういつでも招  請することができる。
3 世界遺産委員会は、その任務を遂行するために同委員会が必要と認める諮問機関を設置することができる。

  第一一条
1 締約国は、できる限り、文化遺産又は自然遺産の一部を構成する物件で、自国の領域内に存在し、かつ、2に規定す  る一覧表に記載することが適当であるものの目録を世界遺産委員会に提出する。この目録は、すべてを網羅したものと はみなされないものとし、当該物件の所在地及び重要性に関する資料を含む。
2 世界遺産委員会は、1の規定に従って締約国が提出する目録に基づき、第一条及び第二条に規定する文化遺産又は 自然遺産の一部を構成する物件であって、同委員会が自己の定めた基準に照らして顕著な普遍的価値を有すると認め るものの一覧表を「世界遺産一覧表」の表題の下に作成し、常時最新のものとし及び公表する。最新の一覧表は、少なく とも二年に一回配布される。
3 世界遺産一覧表に物件を記載するに当たっては、当該国の同意を必要とする。二以上の国が主権又は管轄権を主張 している領域内に存在する物件を記載することは、その紛争の当事国の権利にいかなる影響も及ぼすものではない。
4 世界遺産委員会は、事情により必要とされる場合には、世界遺産一覧表に記載されている物件であって、保存のため  に大規模な作業が必要とされ、かつ、この条約に基づいて援助が要請されているものの一覧表を「危険にさらされてい る世界遺産一覧表」の表題の下に作成し、常時最新のものとし及び公表する。危険にさらされている世界遺産一覧表に は、当該作業に要する経費の見積りを含むものとし、文化遺産又は自然遺産の一部を構成する物件であって、重大かつ 特別な危険にさらされているもののみを記載することができる。このような危険には、急速に進む損壊、大規模な公共事 業若しくは民間事業又は急激な都市開発事業若しくは観光開発事業に起因する滅失の危険、土地の利用又は所有権  の変更に起因する破壊、原因が不明である大規模な変化、理由のいかんを問わない放棄、武力紛争の発生及びそのお  それ、大規模な災害及び異変、大火、地震及び地滑り、噴火並びに水位の変化、洪水及び津波が含まれる。同委員会 は、緊急の必要がある場合にはいつでも、危険にさらされている世界遺産一覧表に新たな物件の記載を行うことができ るものとし、その記載について直ちに公表することができる。
5 世界遺産委員会は、文化遺産又は自然遺産を構成する物件が2及び4に規定するいずれかの一覧表に記載されるた めの基準を定める。
6 世界遺産委員会は、2及び4に規定する一覧表のいずれかへの記載の要請を拒否する前に、当該文化遺産又は自然 遺産が領域内に存在する締約国と協議する。
7 世界遺産委員会は、当該国の同意を得て、2及び4に規定する一覧表の作成に必要な研究及び調査を調整し及び奨  励する。

 第一二条
 文化遺産又は自然遺産を構成する物件が前条の2及び4に規定する一覧表のいずれにも記載されなかったという事実  は、いかなる場合においても、これらの一覧表に記載されることによって生ずる効果については別として、それ以外の点 について顕著な普遍的価値を有しないという意味に解してはならない。

 第一三条
1 世界遺産委員会は、文化遺産又は自然遺産の一部を構成する物件であって、締約国の領域内に存在し、かつ、第十  一条の2及び4に規定する一覧表に記載されており又は記載されることが適当であるがまだ記載されていないものにつ  き、当該締約国が表明する国際的援助の要請を受理し、検討する。当該要請は、当該物件を保護し、保存し、整備し又  は活用することを確保するために行うことができる。
2 1の国際的援助の要請は、また、予備調査の結果更に調査を行うことが必要と認められる場合には、第一条及び第二 条に規定する文化遺産及び自然遺産を認定するためにも行うことができる。
3 世界遺産委員会は、これらの要請についてとられる措置並びに適当な場合には援助の性質及び範囲を決定するもの  とし、同委員会のための当該政府との間の必要な取極の締結を承認する。
4 世界遺産委員会は、その活動の優先順位を決定するものとし、その優先順位の決定に当たり、保護を必要とする物件 が世界の文化遺産及び自然遺産において有する重要性、自然環境又は世界の諸国民の特質及び歴史を最もよく代表  する物件に対して国際的援助を与えることの必要性、実施すべき作業の緊急性並びに脅威にさらされている物件が領域  内に存在する国の利用し得る能力、特に、当該国が当該物件を自力で保護することができる程度を考慮する。
5 世界遺産委員会は、国際的援助が供与された物件の一覧表を作成し、常時最新のものとし及び公表する。
6 世界遺産委員会は、第十五条の規定によって設立される基金の資金の使途を決定する。同委員会は、当該資金を増 額するための方針を追及し、及びこのためすべての有用な措置をとる。
7 世界遺産委員会は、この条約の目的と同様の目的を有する政府間国際機関及び国際的な非政府機関並びに国内の 政府機関及び非政府機関と協力する。同委員会は、その計画及び事業を実施するため、これらの機関、特に、文化財の 保存及び修復の研究のための国際センター(ローマ・センター)、記念物及び遺跡に関する国際会議(ICOMOS)及び自 然及び天然資源の保全に関する国際同盟(IUCN)、公私の機関並びに個人の援助を求めることができる。
8 世界遺産委員会の決定は、出席しかつ投票する構成国の三分の二以上の多数による議決で行う。同委員会の会合に おいては、過半数の構成国が出席していなければならない。

 第一四条
1 世界遺産委員会は、国際連合教育科学文化機関事務局長が任命する事務局の補佐を受ける。
2 国際連合教育科学文化機関事務局長は、文化財の保存及び修復の研究のための国際センター(ローマ・センター)、  記念物及び遺跡に関する国際会議(ICOMOS)及び自然及び天然資源の保全に関する国際同盟(IUCN)の各自の専 門の分野及び能力の範囲における活動を最大限度に利用して、世界遺産委員会の書類及び会議の議事日程を作成し、 並びに同委員会の決定の実施について責任を負う。
 W 世界の文化遺産及び自然遺産の保護のための基金

 第一五条
1 この条約により顕著な普遍的価値を有する世界の文化遺産及び自然遺産の保護のための基金(以下「世界遺産基金 」という。)を設立する。
2 世界遺産基金は、国際連合教育科学文化機関の財政規則に基づく信託基金とする。
3 世界遺産基金の資金は、次のものから成る。
 a 締約国の分担金及び任意拠出金
 b 次の者からの拠出金、贈与又は遺贈
  i 締約国以外の国
  ● 国際連合教育科学文化機関、国際連合の他の機関(特に国際連合開発計画)又は他の政府間機関
  ● 公私の機関又は個人
 c 同基金の資金から生ずる利子
 d 募金によって調達された資金及び同基金のために企画された行事による収入
 e 世界遺産委員会が作成する同基金の規則によって認められるその他のあらゆる資金
4 世界遺産基金に対する拠出及び世界遺産委員会に対するその他の形式による援助は、同委員会が決定する目的に  のみ使用することができる。同委員会は、特定の計画又は事業に用途を限った拠出を受けることができる。ただし、同委 員会が当該計画又は事業の実施を決定している場合に限る。同基金に対する拠出には、いかなる政治的な条件も付す ることができない。

 第一六条
1 締約国は、追加の任意拠出金とは別に、二年に一回定期的に世界遺産基金に分担金を支払うことを約束する。分担金 の額は、国際連合教育科学文化機関の総会の間に開催される締約国会議がすべての締約国について適用される同一 の百分率により決定する。締約国会議におけるこの決定には、会議に出席しかつ投票する締約国(2の宣言を行ってい  ない締約国に限る。)の過半数による議決を必要とする。締約国の分担金の額は、いかなる場合にも、同機関の通常予 算に対する当該締約国の分担金の額の一パーセントを超えないものとする。
2 もっとも、第三十一条及び第三十二条に規定する国は、批准書、受諾書又は加入書を寄託する際に、1の規定に拘束 されない旨を宣言することができる。
3 2の宣言を行った締約国は、国際連合教育科学文化機関事務局長に通告することにより、いつでもその宣言を撤回す ることができる。この場合において、その宣言の撤回は、当該締約国が支払うべき分担金につき、その後の最初の締約 国会議の日まで効力を生じない。
4 2の宣言を行った締約国の拠出金は、世界遺産委員会がその活動を実効的に計画することができるようにするため、少なくとも二年に一回定期的に支払う。その拠出金の額は、1の規定に拘束される場合に支払うべき分担金の額を下回ってはならない。
5 当該年度及びその直前の暦年度についての分担金又は任意拠出金の支払が延滞している締約国は、世界遺産委員会の構成国に選出される資格を有しない。ただし、この規定は、最初の選挙については適用しない。支払が延滞している締約国であって、同委員会の構成国であるものの任期は、第八条1に規定する選挙の時に終了する。

 第一七条
 締約国は、第一条及び第二条に規定する文化遺産及び自然遺産の保護のための寄附を求めることを目的とする国の財団又は団体及び公私の財団又は団体の設立を考慮し又は奨励する。

 第一八条
 締約国は、世界遺産基金のため国際連合教育科学文化機関の主催の下に組織される国際的な募金運動に対して援助を与えるものとし、このため、第十五条3に規定する機関が行う募金について便宜を与える。

 X 国際的援助の条件及び態様
 第一九条
 いかなる締約国も、顕著な普遍的価値を有する文化遺産又は自然遺産の一部を構成する物件で自国の領域内に存在 するもののため、国際的援助を要請することができる。締約国は、当該要請を行う場合には、自国が所有しており、かつ、世界遺産委員会が決定を行う上で必要とされる第二十一条に規定する情報及び資料を提出する。

 第二○条
 この条約に規定する国際的援助は、第十三条2、第二十二条c及び第二十三条の規定が適用される場合を除くほか、文 化遺産又は自然遺産を構成する物件であって、世界遺産委員会が第十一条の2及び4に規定する一覧表のいずれかに 記載することを決定し又は決定することとなっているものにのみ与えることができる。
 第二一条
1 世界遺産委員会は、国際的援助の要請を検討する手続及び要請書の記載事項を定める。要請書は、作業計画、必要 な作業、作業に要する経費の見積り、緊急度及び援助を要請する国の資力によってすべての経費を賄うことができない 理由を明らかにするものとする。要請書は、できる限り、専門家の報告書によって裏付けられなければならない。
2 天災その他の災害に起因する要請は、緊急な作業を必要とすることがあるため、世界遺産委員会が直ちにかつ優先  的に考慮するものとし、同委員会は、このような不測の事態に備えて同委員会が使用することができる予備基金を設け るものとする。
3 世界遺産委員会は、決定に先立ち、同委員会が必要と認める研究及び協議を行う。

 第二二条
 世界遺産委員会は、次の形態の援助を供与することができる。
 a 第十一条の2及び4に規定する文化遺産及び自然遺産の保護、保存、整備及び活用において生ずる芸術上、学術上 及び技術上の問題に関する研究
 b 同委員会が承認した作業が正しく実施されることを確保するための専門家、技術者及び熟練工の提供
 c 文化遺産及び自然遺産の認定、保護、保存、整備及び活用の分野におけるあらゆる水準の職員及び専門家の養成
 d 当該国が所有せず又は入手することができない機材の供与
 e 長期で返済することができる低利又は無利子の貸付け
 f 例外的かつ特別の理由がある場合における返済を要しない補助金の供与

 第二三条
 世界遺産委員会は、また、文化遺産及び自然遺産の認定、保護、保存、整備及び活用の分野におけるあらゆる水準の 職員及び専門家のための全国的又は地域的な研修センターに対して国際的援助を与えることができる。

 第二四条
 大規模な国際的援助の供与に先立ち、詳細な学術的、経済的及び技術的な研究が行われなければならない。これらの 研究は、文化遺産及び自然遺産の保護、保存、整備及び活用のための最も進歩した技術を利用するものとし、この条約 の目的に適合するものでなければならない。これらの研究は、また、当該国が利用し得る能力を合理的に用いる方法を 追及するものとする。

 第二五条
 国際社会は、原則として、必要な作業に要する経費の一部のみを負担する。国際的援助を受ける国は、財政的に不可  能な場合を除くほか、各計画又は事業に充てられる資金のうち相当な割合の額を拠出する。

 第二六条
 世界遺産委員会及び国際的援助を受ける国は、両者の間で締結する協定において、この条約に基づいて国際的援助が 与えられる計画又は事業の実施条件を定める。当該国際的援助を受ける国は、当該協定に定める条件に従い、このよう にして保護される物件を引き続き保護し、保存し及び整備する責任を負う。
 Y 教育事業計画

 第二七条
1 締約国は、あらゆる適当な手段を用いて、特に教育及び広報事業計画を通じて、自国民が第一条及び第二条に規定  する文化遺産及び自然遺産を評価し及び尊重することを強化するよう努める。
2 締約国は、文化遺産及び自然遺産を脅かす危険並びにこの条約に従って実施される活動を広く公衆に周知させること を約束する。

 第二八条
 この条約に基づいて国際的援助を受ける締約国は、援助の対象となった物件の重要性及び当該国際的援助の果たした 役割を周知させるため、適当な措置をとる。
 Z 報告

 第二九条
1 締約国は、国際連合教育科学文化機関の総会が決定する期限及び様式で同総会に提出する報告において、この条  約を適用するために自国がとった立法措置、行政措置その他の措置及びこの分野で得た経験の詳細に関する情報を提 供する。
2 1の報告については、世界遺産委員会に通知する。
3 世界遺産委員会は、その活動に関する報告書を国際連合教育科学文化機関の総会の通常会期ごとに提出する。
 [ 最終条項

 第三○条
 この条約は、ひとしく正文であるアラビア語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語により作成する。
 第三一条
1 この条約は、国際連合教育科学文化機関の加盟国により、それぞれ自国の憲法上の手続に従って批准され又は受諾 されなければならない。
2 批准書又は受諾書は、国際連合教育科学文化機関事務局長に寄託する。

 第三二条
1 この条約は、国際連合教育科学文化機関の非加盟国で同機関の総会が招請するすべての国による加入のために開 放しておく。
2 加入は、国際連合教育科学文化機関事務局長に加入書を寄託することによって行う。

 第三三条
 この条約は、二十番目の批准書、受諾書又は加入書が寄託された日の後三箇月で、その寄託の日以前に批准書、受  諾書又は加入書を寄託した国についてのみ効力を生ずる。この条約は、その他の国については、その批准書、受諾書  又は加入書の寄託の日の後三箇月で効力を生ずる。

 第三四条
 次の規定は、憲法上連邦制又は非単一制をとっている締約国について適用する。
 a この条約の規定であって連邦又は中央の立法機関の立法権の下で実施されるものについては、連邦又は中央の政  府の義務は、連邦制をとっていない締約国の義務と同一とする。
 b この条約の規定であって邦、州又は県の立法権の下で実施されるものであり、かつ、連邦の憲法制度によって邦、州  又は県が立法措置をとることを義務付けられていないものについては、連邦の政府は、これらの邦、州又は県の権限  のある機関に対し、採択についての勧告を付してその規定を通報する。
 第三五条
1 締約国は、この条約を廃棄することができる。
2 廃棄は、国際連合教育科学文化機関事務局長に寄託する文書により通告する。
3 廃棄は、廃棄書の受領の後十二箇月で効力を生ずる。廃棄は、脱退が効力を生ずる日までは、廃棄を行う国の財政上 の義務に影響を及ぼすものではない。

 第三六条
 国際連合教育科学文化機関事務局長は、同機関の加盟国及び第三十二条に規定する同機関の非加盟国並びに国際 連合に対し、第三十一条及び第三十二条に規定するすべての批准書、受諾書及び加入書の寄託並びに前条に規定す る廃棄を通報する。

 第三七条
1 この条約は、国際連合教育科学文化機関の総会において改正することができる。その改正は、改正条約の当事国とな る国のみを拘束する。
2 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、批准、受諾又は加入のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終止する。

 第三八条
 この条約は、国際連合教育科学文化機関事務局長の要請により、国際連合憲章第百二条の規定に従って、国際連合  事務局に登録する。

千九百七十二年十一月二十三日にパリで、総会の第十七回会期の議長及び国際連合教育科学文化機関事務局長の署名を有する本書二通を作成した。これらの本書は、同機関に寄託するものとし、その認証謄本は、第三十一条及び第三十二条に規定するすべての国並びに国際連合に送付する。

 以上は、国際連合教育科学文化機関の総会が、パリで開催されて千九百七十二年十一月二十一日に閉会を宣言されたその第十七回会期において、正当に採択した条約の真正な本文である。

 以上の証拠として、我々は、千九百七十二年十一月二十三日に署名した。
 

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